そよかぜ便り

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連続テレビ小説 ゆうぐも(7)

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夕子は決して体を動かすのが得意ではなかったが、ダンス部に所属していた。何処の学校でも往々にしてそうだが、ダンス部というだけで、一目置かれるからである。また、夕子にはこれといってやりたい競技もなかった。

ダンス部の部員はやはり派手好きというか、常に異性の目を気にしているような女子生徒が多かった。彼女たちは思春期特有の匂いを振りまきながら、他者の目があたかも刺さっているかのように気にしては媚態を振りまいていた。

夕子はそこから一歩引いて、深く関わるでもなく、避けられるでもなく、存在しているに過ぎなかった。

仙子が来るまでは。

水野仙子はそれまで入っていた空手部を辞め、それを口外はしなかったものの、夕子を追ってダンス部に入部してきた。夕子は何となくそれを察したが、悪い気はしなかったのであろう、仙子をサポートし、上手く部活動に参加できるように取り計らっていた。

仙子は何にでも立候補する押しの強さとかしましさから、学年の他の生徒からも知られていた。そのため、ダンス部の女子生徒たちは、彼女の入部に難色を示した。そしてそれは、「仙子を連れてきた」夕子にも飛び火した。彼女たちは夕子たちから距離を置いた。

しかしそれは、仙子にとっては好ましい事態であった。夕子にも損害はなかった。二人は、より濃密に結びつくこととなった。

 

7月になると、プールの授業が始まった。女子特有の問題のため、致し方ないと思うのであるが、まだ考え方の古い進学校では、男女問わず、不参加が3回を超えると夏休みに1時間泳がされた。夕子は既にリーチであった。次に休むと、夏休みに泳がされることになっていた。

その日は気温が高く天気も良く、プール日和であった。夕子にとっても普段は憂鬱なプールが少しだけ楽しみなものとなっていた。昼休みが終わると、夕子は仙子と共に更衣室に向かった。更衣室はプールと同じ建物にあった。

しかし、夕子は草のツルに足を引っかけ、盛大に転倒してしまった。残念ながら、彼女は夏休みに泳がされる羽目になった。

仙子は既に補講が確定していたので、それを喜んでいた。