そよかぜ便り

些細な日常をお届けします!

連続テレビ小説 ゆうぐも(14)

f:id:rikorisu0213:20220115114212j:image

昼休み、夕子は図書室にいた。図書室は音楽室の真上にあるにも関わらず、防音設備が整っているのか、トランペットの音1つ聞こえてこなかった。代わりに、穏やかなクラシックのピアノが流れていた。

「ありがとう。人が足りていなかったの。」

八重子は、司書席の座ってパソコンを触っていた。夕子は水曜日と木曜日の昼休みに、八重子と一緒に本の貸借を管理する係になった。

「司書さんのひとりが産休でお休みを取っていてね。」

夕子は図書室を一周した。ふんわりとした新しい絨毯は、暗く、濃い赤色をしていた。

司書席は1番奥の書庫の前にあった。そして、すりガラスの窓の傍に閲覧スペースがあった。あとは全て本棚である。夕子は柔らかな光の当たっている閲覧スペースに腰掛けた。校舎に取り囲まれている校庭が見える。

昼休みだからか、校庭は閑散としていた。

「学校は慣れた?」

気がつくと、八重子が隣に立っていた。いくつかの本を抱えている。夕子が頷くと、八重子は優しく微笑んだ。

「困ってることがあったら、先生に相談してね」

 

放課後になると、夕子は再び選択に迫られた。合唱部か、ダンス部か。夕子はそれを選べなかったので、放課後は交互に練習に出向いていた。

今日はダンス部に行く日だった。更衣室のドアを開けると、前にも話しかけてきた黄紅井聖子(まりこ)が真っ先に声をかけてきた。

「入部届け、持ってきた?」

夕子が首を振ると、聖子は残念そうに肩を竦めた。

「迷ってる部活でもあるの?」

夕子は口ごもった。ここで何かを言うべきではない、と思ったのである。夕子が無言でいると、聖子は早めに決めた方がいいよ、と言った。

今日も基礎練習から始まった。夕子としては、早く振りを踊りたかったので、基礎練習は退屈であった。

ぼんやりと窓から見えるバレー部や陸上部を眺めていると、映子の姿が見えた。部活のことで悩んでいると相談しようかと思ったが、何となく、映子には近寄り難いものを感じてしまった。

それと同時に、夕子はあの美しい人について思い出した。白雪露世。彼女のやわらかなまつ毛。

そんなことを考えているうちに基礎練習が終わり、振り入れの時間になった。

夕子は踊るメンバーには入っていないが、傍で振りを覚えて、一緒に踊った。

「やっぱり、うちに入った方がいいよ」

聖子が言った。夕子の気持ちも少しだけ、そちら側に振れた。

 

昇降口に着くと、合唱部も丁度練習を終えていた。その中には、鈴子の姿もあった。その形のいい口は、「あ」という様に開いた。夕子はどうしようもない気持ちになった。