そよかぜ便り

些細な日常をお届けします!

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ミルクティー

締め切られた教室は、人の声とお弁当の匂いと暖房のせいで、むわっとした空気に包まれていた。 私は、ミルクティーの甘さで食後の眠気から目を覚まながら、佐藤の話を聞いていた。 佐藤は、お弁当を食べながら、スマホを見ながら喋っていた。器用なものだ。 …

illily

駅前のパン屋で流れているような、フランス風の音楽と共に登場するのは、今話題の人気女優。私たちはぼんやりと午後のドラマを見ながら、ソファに横たわっていた。 「可哀想だねえ。」 彼女が目にしてしまったのは、交際相手と他の女性のキスシーンだった。 「…

文学談話 2駅目 jack in the box

なんとか目を開けて起き上がると、グワン、と視界が揺れた。ついでに頭の中の金物が、グワングワンと鳴り響く。 寝すぎか、二日酔いか、分からないが、また布団に潜る。 シーツには涙のあとが残っていた。 こんな話も、した覚えがある。 箱の中に関係を構築…

たこやきのうた

イカ タコ サシミの収穫祭 だし巻きおにぎり明太子 トイレの壁には富士山景 あいつメンヘラクソビッチ 宇宙から来たクラスの冥王星 あー 手首切り 縁を切り メンチ切る ちゅーちゅーたこかいな 関西人の力 誰か曲つけてくれてええんやで たこ焼きを買いまし…

文学談話 1駅名 conversation

くちぶえのような風の音。 何かが擦れる音がする。 アスファルトの上を、駆ける子供のように、老いて枯れきった秋の名残りが、冷たい風に乗って滑っていく音だ。 目を開けると、窓には雲ひとつない爽やかな青空が飛び込んでくる。 冷えて気だるい体を、体温…