そよかぜ便り

些細な日常をお届けします!

illily

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 駅前のパン屋で流れているような、フランス風の音楽と共に登場するのは、今話題の人気女優。私たちはぼんやりと午後のドラマを見ながら、ソファに横たわっていた。

「可哀想だねえ。」

彼女が目にしてしまったのは、交際相手と他の女性のキスシーンだった。

「私だったら、その場で刺しかねないよ。」

私の足と足の間に座っている女の子がこちらに振り向いた。

「私ならどちらかがトイレに行ったタイミングで攫うかなあ。」

私は彼女の髪を撫でながら言った。平和な午後のひとときだった。

「大変だったよねえ、あの頃は。」

「そうだねえ、もしかしたら、どちらかが死んでたかも。」

とは言ったものの、そんなはずは無い。

 

だって私は、あなたが彼を見つめる熱い目を見たその瞬間に、恋に落ちたのだから。