そよかぜ便り

些細な日常をお届けします!

水の中で生きる

水生歴10年16月28日

人間が核戦争を経て水中都市で生活するようになってから、10年が経った。インフラは整備されておらず、未だに陸の上で生活を続ける人々もいる。

そんな中(どんな中?)、水の中高校に通うユムシは、テレビをぼんやりとみていた。

ニュースの時間です。

東京都目黒区の住宅街で、24歳の女性が血を流して倒れているとの通報がありました。

被害者は東京都練馬区で勤務している河中ジェイムソンズ麻子さんで、犯人は見つかっていません。

被害者はバタフライナイフで腹部を切り裂かれており、周囲には血痕と腸の中身である消化物と排泄物の狭間のようなものが残されていたそうです。

この事件について、情報をお持ちの方は

7055-652-800

までご連絡ください。

ユムシは目と口と鼻と眉毛のない顔をフルフル震わせて怯えた。

テレビに映った腸の中身は、ユムシを切り裂いた時に出てくるものに似ていたのだ。

ユムシは怖くなってちゃぶ台に隠れた。

トントン

ノックの音が聞こえる。

お勝手口に出ると、フグが顔を出した。

性格には、口を出した。

ユムシは、のたうち回った。

白くてツルツルした分厚い肉体をそこら中に打ち付けて。

フグは、自分の口いっぱいにはありそうなユムシの体を、丸呑み

 

せずに、人参をも噛み切る歯を突き立てて齧った。

ユムシからは赤茶色の液体が吹き出した。

ユムシは発狂し、叫んだ。

その叫びは、ご近所に響き渡った。

だが、誰も来ない。

フグは気にせずにユムシを啄んだ。

ユムシの喉ってどこにあるの?

ユムシは再び叫んだ。

その声は、口からというより、喉から直接出ているのではないかというような、声と言っていいものか、音と言うべきか、分からないものだった。

フグはユムシの顔(顔なんてある?)を引きちぎった。

ユムシは顔を引きちぎられても叫んでいた。

ユムシの切断部からは、赤茶色の液体が吹き出し続けている。

フグはユムシを食べ歩きると、ユムシ家を出た。

 

ふう、お腹いっぱいだ。さて、帰ったら団員を総括できなかったところの敗北死をさせよう。

 

フグはAir podsを付けて、しょーもない音楽を聴き始めた。

 

 

 

 

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