そよかぜ便り

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連続テレビ小説 ゆうぐも(3)

 

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夕子の通う中高一貫校は、宗教系の学校ではなかったが、戦後にできた比較的新しい学校であるため、他校のいい所を盗んでいた。そのひとつがシスター制である。

一つ上の学年にシスターがつき、面倒を見たり、相談に乗ったりする仕組みである。生徒はこれにより、コミュニケーション能力や責任感、面倒みの良さを身につけていくという。トラブルもつきものだと想定されるが、そういった場合にはシスターは変更されたり、誰かが掛け持ちしたりする。

夕子はこのシスター制に大変惹かれていた。自分だけの特別な存在ができるというのは、それだけ嬉しいものなのであった。

だが実際、この仕組みは形骸化していて、シスター同士は疎遠になっていることが多かった。

 

映子は夕子に校内を案内した。映子はスラリとした背の高い女子生徒だった。膝下までの長いスカートから覗くふくらはぎは引き締まっていて、少し日に焼けていた。ポニーテールの下の項も、ほのかに太陽の痕が残っていた。

昇降口から入り、まず、吹き抜けの空間があった。校舎はいくつかの棟に別れながら、広い中庭を取り囲むような回廊型のものになっていた。外部から見られるのを塞ぐのにいいシステムだろう。校庭はなく、外体育や部活はこの中庭で行われるらしかった。プールは体育棟と呼ばれる体育館のある建物で行われていた。

「あれがダンス部。うちには、舞踊部、ダンス部、体操部って、似たような部活が3つあるんだよね。」

ガラスの向こうに見える中庭では、ダンス部の生徒たちが何やら騒がしい音楽で朝練をしていた。朝の光が少女たちの肌に落ちかかる汗を照らしていた。

「私はバレー部に入ってるの。うち、球技系の部活は少ないんだけどね。バレーとバスケが1番人気。次にテニスかな。」

テニス部も遠くで練習していた。夕子は踊る少女達を見て、前の学校でもやっていたダンスを続けようと考えた。

2階に上がると、合唱の声が大きくなっているのが聞こえた。第1音楽室で、合唱部が練習していた。吹奏楽部はというと、別校舎にある第2音楽室で練習しているようだった。

「うちの学校は合唱部と吹奏楽部が強豪で二大巨頭だからわざわざ棟を分けて音楽室を配置してるんだよ。」

と、映子は言った。

「入るのも難しくて、オーディションがあるから、紫雲さんが入れるなら、高校からになるね。」

夕子は合唱に興味があるわけではなかったが、高校からなら、初めてもいいか、なんて思っていた。

「教室棟はこっち。高校と向かい合わせになってるの。」

教室は1年生が3階、2年生が2階、3年生が1階にあった。若いうちに体力を付けろという意図があるのだろうか。

 

映子の案内が終わると、夕子は1人階段を登り、教室に向かった。彼女の黒いスカートの裾が、階段を上がる度にふわふわと揺れた。

愈々、彼女のdebutanteである。