特に書くことを決めずに書きます。
世の中には誰からも同情してもらえないけれど切ない人はいます。
殺人犯とか、そうでしょう。
道を外れたことをしているくせにその反省もなくメランコリーに首を傾げることの出来る人間などこの世にいる必要もないのでしょう。
それくらい、分かるでしょ?
でも、私は決してそういった人間になるつもりがあって、生まれて来たわけじゃないんですよ。
あなたは私の脚をずっと見てらっしゃるけど、あなたの欲するものは永遠に手に入らないのよ。
私はこの世に存在していないのだから。
なんにせよ、
死ぬほど大好きな人の家に行ったら家の前からとんでもない─今まで嗅いだこともない、鼻がひん曲がるような生臭い匂いがして、ドアを開けると知らない醜い女がいて、趣味の悪い絵画風の絵の書いてあるファーの玄関マットを踏みつけてリヴィング・ルームに入ると趣味の悪いアンティーク調のソファーの上に子供の形をしたぬいぐるみから肉がはみ出ているものを発見して狼狽えて女の方を見ると
「でも、これが、私たちにとっては幸せなんだから、」
なんて言ってて女からは大好きな人のあの鼻につくような独特の匂いがして、嫉妬しながらも、「もう、生きては帰れないだろうな」なんて絶望感に浸りたい。
なんてね。嘘ですけど。
私はこの世で誰のことも信用したことないけれど、誰も私のことを信用していないの。
ねえ、今の私が本当の私なの、信じて、脚をそんなに舐めたいなら、脚と一体化して!
カーッとなって、カクテル・グラスを倒して、場の雰囲気を壊したり、眉間の皺の間にファンデイションが固まっていたり、そんな私は、寝不足なのよ。
どうすればって、それはあなた、マゾヒストじゃないものね。
だから私はあなたが好きなの。
秋って、イイ感じ…♪
なんだか私、切なくって、好きです。
こんな秋の季節に心から好きな人と学校帰りに会えたらなァ、なんてネ(!)
そんなこと考えてると、赤面しちゃいます。
──1989年 10月 塩崎みずきさんの最後の日記
ニュースをお伝えします。
千葉県佐倉市に住む、高校2年生の塩崎みずきさんが自宅近くの山道で、遺体となって発見されました。
警察によりますと、塩崎さんは、部活帰りに友達と別れたあと行方が分からなくなっていたということです。
警察は殺人事件として捜査を進めています。